LNG燃料転換( 燃転 :ねんてん)ビジネスについて解説します。まずは歴史や世の中の流れから。
日本におけるLNGの歴史(1969年~)
日本で初めてLNGを海外より迎え入れたのは東京ガス。経済産業省のHPに良い資料がありましたのでご興味のある方はチェックされてください。まさにプロジェクトX(エェーックス エェーックス エェーックス)の世界で男ごころをくすぐられます。偉大な大先輩方に敬礼です。
LNGが求められるのはなぜ?
2007年の環境白書・循環型社会白書で「低炭素社会」という言葉が用いられて以降、よく耳にするようになりました。低炭素=二酸化炭素の排出を低く抑える、の意味です。
世の中では(諸説ありますが)地球温暖化による気候変動は温室効果ガス※ が原因であるとされており、日本は『2050年までにカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す』との立場を取っています。
※二酸化炭素やメタンや一酸化二窒素やフロンガスなど
ゆえに二酸化炭素を多く出す燃料( 石炭 や 重油 など)から、省CO2である LNG (や LPG )へと燃料の転換(シフト)が進んでいる訳です。
LNGはどこ(誰)から買える?
LNGを海外から輸入しているのは 電力会社 、 都市ガス会社 、 大手商社 です。電力会社はLNG火力発電所の発電燃料として、都市ガス会社は都市ガスの原料としてLNGを用いたのち、その他の余剰分を外販しています。売り先は、重油などを一定量使用している工場です。
ということで、電力会社・ガス会社・商社の系列の販売会社(販社)が「クリーンなLNGを使いませんか?」と、工場に対してアプローチして来ます。詳しい構図、商流は 1-1. 業界の構図を知ろう【 超解説 】 で解説しています。
ユーザー(買い手)の立場からすると重油・灯油・LPGは仕入先候補が幾つもあるので、比較検討が容易に行えます。売り手の立場としては、厳しい価格競争を行う(行わされる)ことになります。LNGはどこ(誰)から買える?
対して「LNGは購入先がとても限られる」ことが特徴として挙げられます。
中部地区(北陸エリア)では、3~4社から見積が取れる可能性がありますが、これはLNG受入基地が近くに複数しどこからでもローリー配送できるからです。
工場近傍にLNG受入基地が1つしかない場合は、見積を取得できるのも実質一択となります。売り手の立場が強い燃料(業界)であると言えます。
LNG導入の目安(工場規模ごとの最適燃料はなにか)
ほかの燃料と違い、LNGは -162℃ の超低温であることから若干の扱いづらさがあります。LNGを使用するための設備も超低温に耐えうるスペックが要求されるため、(他燃料と比較して)プラント建設費用が高くつきます。
重油から省CO2燃料(LNGやLPG)への燃料転換を検討する場合は
・年間使用量が ~ 500t 程度であれば、LPG(液化石油ガス)になることが多く、
・年間使用量が 500tを超えて1,000t近くなればなる程、LNG(液化天然ガス)になることが多い
と言えます。
ユーザーの立場としては、LNGとLPG双方の提案を受けてしっかりと比較するのが良いでしょう。
・LNG換算で年間使用量が1,000t付近ではほぼLNGを選択される工場が多いです
・500t前後あたりだと、投資が低く抑えられそこそこクリーンで扱いやすいLPGを選ぶ方も多いです
LNGとLPGの同能力のプラントを比較すると、LNG設備が2~3倍の費用が掛かると言われています。CO2(環境性能)は、LPGよりもLNGの方がさらに10%ほど削減量が多いです。(よりクリーン)
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将来のネクスト燃料はどうなる?
工場で使用するエネルギー(燃やす燃料)において、現在 流通が確立している中で最も排出CO2が少ないのがLNG、次点でLPGとなります。将来的にはアンモニアや水素のエネルギー利用が検討されていますが、これはあと10~20年は実用化に至らないと予想されます。
産業ガス(原料や中間材での消費)としては水素やアンモニアはすでに商用利用されていますが、産業エネルギー(一年を通じ大量消費される)としての利用には、設備面や供給・流通体制の確立にまだまだ時間を要する見込みです。
低酸素社会を目指す日本において、LNGへの燃料転換は当面の間は続いていくと言えるでしょう。
LNG燃転ビジネスってどんな風になっとるの?
LNG燃転ビジネスの関係者は以下に分類されます。
- LNGを買いたい会社(ユーザー:工場)
- LNGを売りたい会社(電力会社やガス会社)
- 設備を建てたい会社(エンジニアリング会社)
- 設備をメンテしたい会社(検査会社)
とてもニッチな世界でなかなか情報が得にくい業界だと思いますが順に解説していきます。
1-1. 業界の構図を知ろう【 超解説 】
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